コラム
子どもの病気とその対応-3
今回は「咳の時の対応」についてご説明致します。
※第1回の「発熱と嘔吐」の対応については ⇒ こちら
※第2回の「熱性けいれんと下痢」の対応については ⇒ こちら
「咳」や「痰」はどうして出るの?
⇒ 咳は、のどや気管支の粘膜に付いたウィルスや細菌やほこり又は異物などを体の中に入らないよ
うに痰として出すための自然の体の反応です。
咳が出るからと言って、市販の強い咳止めを飲ませて咳を止めてしまうことは、かえって症状を
長引かせたり、重くしたりすることにもなりかねません。
痰を出しやすくしてあげることが大切です。
小さいお子さんは、大人のように痰だけ出すことは難しく、咳と共に吐いて痰を出そうとします。
お子さんが吐いた時には、痰を出そうとして吐いたのか、胃腸炎で気持ち悪くて吐いたのか、みき
わめが必要です。
・痰を出すため吐いた場合は …… 咳込んで吐きます。
吐物にドローとした痰が混じります。
顔色は変らず、吐いた後は機嫌がよく食欲があります。
・胃腸炎で吐いた場合は …… 咳をしないで吐きます。
吐物はサラサラしています。
時には、黄色い胃液様のものを吐きます。
顔色が青白く、元気がなくなり、食欲はありません。
*咳の症状が強く、つらそうな時には、受診が必要です。
秋に咳が増えるのはなぜ?
⇒ 肺は特に秋に良く働きます。澄んだ秋空のように肺をきれいにしようと咳や痰が増えます。
また秋は台風の多い季節でもあり、気圧の関係で喘息の発作が起きやすい状態になります。
そして、夏の暑さと湿気が喘息の原因のひとつであるダニの繁殖を促して、一年の中で最も
ダニが増える季節でもあるのです。
緊急性のある咳の出る病気は?
⇒ 1.犬が吠えるような、オットセイが啼くような響く咳で、夜中から明け方にひどくなる場合
→ 「 急性喉頭炎・仮性クループ 」
2.「コンコンコンコンヒー」と顔を真っ赤にして咳き込んだ後に引きこむ場合
→ 「 百日咳 」
3.突然、激しく咳き込み、息を吸う時にヒューヒュー苦しそうな場合
→ 「 気管内異物 」(おもちゃやピーナツなど)
4.発熱を伴う激しい咳や、ハーハーした早い呼吸の場合
→ 「 気管支炎・肺炎 」
5.ゼーゼー・ヒューヒュー息を吐く時に苦しそうな咳の場合
→ 「 気管支喘息 」
「咳」が出た時の受診のめやすは?
1.< 救急車で受診 >
・顔色が白い。または紫色。唇や爪が紫色。
・呼吸が止まっている。
・意識がない。
・自分で動くことができない。
・失禁している。
2.< すぐに受診 >
・顔色がいつもより悪い。
・ぐったりとして元気がない。
・会話ができない。
・意識がボーとしている。
・ゼーゼー、ヒューヒューした音が聞こえる。
・息をする時、肩が上下に揺れる。小鼻がピコピコ膨らむ。
・息をする時、喉のくぼみや鎖骨や肋骨がペコペコとへこむ。
・咳がひどく横になって眠れない。
・咳がひどくおっぱいや水分が飲めない。
・おっとせいが鳴くようなガーコガーコした咳や犬が吠えるようなケンケンした咳。
3.< なるべく早めに受診 >
・熱があり、繰り返し咳き込んでいる。
・顔色は悪くないが、ゼーゼーヒューヒューしている。
・のどが詰まるような感じの咳が出る。
・突然むせたように咳き込む。
4.< 様子を見て受診 >
・咳は出ているが元気や食欲がある。水分が飲める。
・咳やゼーゼーはあっても、良く遊べて、良く眠れている。
・痰がからみ、たまに咳をして痰を吐くが、吐いた後は機嫌よく元気がある。
咳が出た時の家庭での対応は?
⇒ 1.あわてず落ち着いて対応すること… 母親があわてると対応方法が分からなくなる上に子供は不安になります。
2.お部屋の加湿をする … 加湿器をつけたり、洗濯物をお部屋に干したり。
3.水分をこまめに飲ませる … 呼吸がハーハーすると体の水分が失われます。
水分が不足すると痰が固まり出し難くなります。
咳の合間に少しずつ飲ませましょう。
体に水分が充分に入ると痰が溶けて出しやすくなります。
咳をした時に痰を出すよう促します。
赤ちゃんは鼻を吸い取ってあげると咳が楽になります
4.上体を起こす … 立てて抱っこすると呼吸が楽になります。
座布団やクッションで45度くらい上体を起こす。
5.ゆったりとした衣服にす … 呼吸しやすいように衣服のボタンやゴムを緩めます。
6.ミルクや食事はやや控えめに … 胃が膨らむと肺が圧迫されて苦しくなります。
1回量は少なく、回数を多く。
< 気管支喘息発作時の対応 >
アレルギー反応により、気道や気管支が細くなり、発作的に息を吐く時に苦しくなります。
アレルゲンは一人一人違いますが、代表的なものには、ダニ・ハウスダスト・花粉・カビ・犬や猫など動物の毛や
皮膚・食べ物など様々です。
また、感染・ストレス・天候・気圧の変化・煙草や花火や線香の煙などによって発作がおこりやすくなります。
お子さんのアレルゲンを知り、アレルゲンに近づかないようにしましょう。
< 小発作 >
?軽いゼーゼーの時、顔色も良く機嫌も良ければ ⇒水分を飲ませて 様子をみる
ご飯も食べられて眠れる
あきらかなゼーゼー。苦しくて横になって眠れない。⇒ 受診する
機嫌は悪く、やっと返事をする
鎖骨がペコペコした呼吸
< 大発作 >
著明なゼーゼー。唇や爪が紫色。(チアノーゼ) ⇒ 急いで受診。
苦しくて動けない。会話もできない。眠れない。
< 重積発作 >
呼吸停止・意識がない。チアノーゼ。 ⇒ 救急車で受診
※ 初めての発作は家庭で判断せず、必ず受診をしてそれからの対応を理解しましょう。
※ 軽い発作の時は、家に喘息の発作止めの薬があれば飲ませて様子をみてもよいでしょう。
又、吸入をかけて様子をみても良いでしょう。
⇒ 30分以上たっても治まらない時は、早めに受診してください。
がまんせず、早めの受診の方が、治療もスムーズで回復も早いです。
※ 発作が治まらないと薬を追加したり、時間を空けずに吸入することは心臓に負担をかけ、命に係わる危険なことです。
日頃から薬の使い方は主治医に確認しておきましょう?
※ 布団を干す時には、よく叩いて干し、取り込む時には布団の表面を掃除機で吸い取り、
叩いたり、干した布団の上で飛び跳ねたりしないようにしましょう。
布団の中のダニが表面に出てきて、夜中発作を起こすため。
※ ぬいぐるみはこまめに洗いましょう。
参考資料
「お母さんに伝えたい 子供の病気・ホームケアガイド」
日本外来小児科学会 編著
「みるみる小児看護」 医学評論社